バッハ「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマで4声対位法を作ってみました。
前にも同じ定旋律を作って、そこにいろいろと対位法の実習例を作ったことがあります。↓
この再チャレンジ版ということになります。
具体的にはバッハ「パッサカリアとフーガ ハ短調」で出てくるバスのテーマを基本にして10数小節の定旋律を作り、それをバス、つまり四声体の最下声部において、その上に上三声をいろいろ積み上げたものになります。
その第2弾として今回はご紹介しましょう。
バッハの気持ちがわかる?「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマは好きになれるかも
半分冗談、半分本気で作ってみてみましたが、作るとけっこうのめります。
というか、この「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマは、言ってみれば経ったこの単一の旋律だけで、すごく叙情性が豊かでエモります。
バッハは後年、最後の大作「フーガの技法」で、四重フーガの最初のテーマとしてこの「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマの冒頭とそっくりのメロディを用いていますが、そういうところを見ると彼もこのテーマをたいそう気に入っていたのではないだろうか?
そういう気持ちがわかるのではないでしょうか?
「パッサカリアとフーガ ハ短調」テーマは他人の作?
ところで以前私もチラッと知ったのですが、この「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマというのは、純粋にバッハ自身の作によるのではなく、もともと他人の作ったテーマを元にして彼がアレンジしたものだったという説があります。
この辺私も不案内で、むしろ下のウィキ記事の内容の方がより詳しく解説していると思いますので、ちょっとリンクを示しておきます。
(ご注意:なお、ウィキ記事にはその正確さ自体に問題があるともされています。この点にはあらかじめご留意ください)
ただ、他にもバッハはビバルディの作品をアレンジしてオルガン協奏曲にしたり、他人のテーマを使ってオルガン曲「幻想曲とフーガト短調」のフーガのテーマにしてみたりしています。
今のような著作権がんじがらめと違い、こういうことは当時として別段悪意あっての行為ではなく、だから彼以外にも普通に行われていたとも聞きます。
むしろ他人の作品をこうして自分の作品に生かすという行為は、一種のオマージュというか、敬意を込めていたフシもあったみたいですね。
そして同時にまた、他人に「使われる」テーマや断片を作った当の作者本人にとっても、それはそれで名誉だと感じられていたということのようです。
譜面のご紹介「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマで3声、4声対位法
ということで、今回新たに作ってみた譜面を下にご紹介します。
内容は上記の通り、「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマを定旋律にしてまず3声、4声の対位法実習、そして同じ4声で上三声を自由対旋律のみで積み上げた実習です。
いずれもバスにのみ定旋律であるテーマをおいています。
別に他の声部にもこの定旋律はおけますが、その楽想上、バスにおくのが最もふさわしいと感じた結果ですね。
この辺、バッハがその「パッサカリアとフーガ ハ短調」の「パッサカリア」で常変わらずバスにこのテーマを置き続けた、その気持ちが共感できるかも知れません。
なお、譜面中、上の方に記載の通り、連続8度ができています。三声で連続8度は良くないのですが、直すのが大変なのでそのままにしてありますご容赦を。
そのうち時間ができたら直してみます。
やはり対位法の諸規則事項は池内友次郎「二声対位法」「三声八声対位法」によっています。
ややこしいのは、この「池内教本」はもともと「二声対位法」「三声八声対位法」「学習フーガ」の三部作で完結している教本なのですが、ただ今は二声対位法のみが販売されていて、後の二冊は絶版になっています。
私自身、これらを絶版にしておくのは惜しいと思いますし、大方の方たちも同じ心境と思います。
特に「学習フーガ」は、分野的になかなか他の著書が見当たらず、いわば唯一の教本と言えました。
音声付き動画(譜面の演奏)
下にその譜面と、音声をつけた動画をご紹介しますが、その最後に、譜面中には出ていませんがオマケで定旋律だけの演奏をくっつけてみました。
譜面中に書いているとおり、連続8度ができていますが、あえて許してしまっています。
例のごとく、著作権は相変わらず付いていますが、ご笑覧いただければ幸いです。
バッハ自身もかなりの入れ込みがあったにちがいない?
というわけで、バッハ「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマを使って今回もちょっとこしらえてみました。
自分的にもこの「パッサカリアとフーガ ハ短調」のテーマというのは何となく愛着の湧くメロディのようで、だからこうして何度もいろいろ作り上げたりしてしまうのかも知れません。
繰り返しますが、バッハが死の直前に作曲し、結果として未完成のままとなった「フーガの技法」四重フーガのテーマ冒頭に同じ音型を用いたのは、相当な入れ込みが彼自身の中にもあったのだと思います。
そういう経緯を振り返れば、非常に奥の深いテーマであり、同時に今後も無数とも言えるくらいに様々なトライを行って利用してみるべき価値が十分ある、そういう超絶な音楽ではないかと思います。
そのうちまた第3弾、4弾のように作っては発表することになるかも知れません。
そのときはまたよろしくご笑覧願います。
投稿日: 2019年12月30日
再構築・再投稿日:2022年4月14日