他動詞introduceは、A to B という形を後続させてよく使われます。
意味は「AをBに紹介する」。
この場合、AもBも基本『人』を表す名詞。
最もよく使われる意味、解釈といえるでしょう。
もう一つの意味としてよく見られるのは、
「AをBに導入する」、あるいは「AをBに取り入れる」などとして、AやBはシステムや機材、あるいは発想などを表す名詞になります。
で、ここまでは英検2級、高校中級レベルの方だったらおおよそ知っているはずの文法、というか語法になります。
ところが!
実のところ一つ目にあげた意味「AをBに紹介する」というものがクセ者で、必ずしも「こうならない」という理屈があるようです。
どういうことかというと、introduce A to B は、「AをBに紹介する」のではなく、その真っ逆さまの意味になりうる、というコトです。
つまり、「BをAに紹介する」。
これが本当は正しい、というのが実はネイティブの主張としてあるのです!
特によく英会話上で見られるのがAをyou、つまり会話の相手である「あなた(たち)」、そしてBはhimとかher、あるいはthemなどの、いわゆる“第三者”の形です。
この際に「あなた(たち)を彼(女)(たち)に紹介する」とするのではなく、
「彼(女)(たち)をあなた(たち)に紹介する」とする。
これが実際の会話上では正しい、というのです。
そもそもAはれっきとした目的語。
そして目的語だったら通常和訳の際は助詞「~を」を付ける事になります。
そして続く前置詞toは、方向性や終着点を示す名詞を後に添えて「~に」と訳すもの。
よって、あくまでも文法的には『「AをBに」紹介する』、が鉄板。
正義なのです。
ですが、それでもこの場合、上の様に「BをAに紹介する」が正しいのだ、というのがネイティブの主張になります。
何でこうなるのか?
なぜネイティブはAとBとをひっくり返して意味をとらえようとするのか?
上記の通り、このintroduceの語法を学んでいるのはちょうど高校生など、大切な時期に当たる人たちのはず。
だからこうした事実があるという事を知っておくのは絶対に無駄ではありません。
というか、今後ますます日本国内で会っても外国人と接する機会が増えていく、そういう見込みを考えれば、むしろ知らなければならない事と言えるでしょう。
その裏付けというか、実のところ私がちょっと手がけている文法作成問題などにも、こうした和訳がドンと載せられているのです!
ですので、知らないと本当にまごつきます。
そういうわけですので、今回この件について、ちょっと深掘りして説明してみましょう。
introduce A to B を「AをBに紹介する」はやっぱり間違い!?
私もこれを仕事の関係でネイティブから指摘を受けたことがありました。
その際、やっぱり大いにまごつきましたね。
それこそ、なんだか「ネイティブ外人の方が間違っているのではないか?」みたいに、疑心暗鬼になりました。
そしていろいろとネット検索したり、手持ちの辞書を目をこらして確認したものです。
その結果。
まず辞書の上ではやっぱりintroduce A to B を「AをBに紹介する」。
これしか載っておりません。
ということは、少なくとも辞書という“権威”、そして文法上の正確さを引き合いに出すなら、「AをBに紹介する」で全然正しい。
間違っていないのです。
そして、多くの高校生あるいはそのレベルの英語学習者の方たちはこうした意味の取り方をしているはずなのです。
何でネイティブは真っ逆さまにとらえようとするのか?
しかしながら、あくまでも実際に仕事や生活上で息をするように英会話している英語ネイティブにとっては、そうはいかない、という事になります。
要するに、「文法上は確かにこれでおかしくはないが、実際に現場で英語を使う段になると、必ずしもそうはいかない」。
そういう場面が確かに持ち上がります。
英語、というか私たち日本人が日本語を使う場面であってもそれは言えるのではないでしょうか?
じゃあ、だとすれば、何かの理由、都合があって、そういう“正規の文法的な解釈とは異なる表現、意味”をネイティブたちが使おうとしているはずです。
なぜintroduce A to B を「BをAに紹介する」にしようとするのでしょうか?
『人称』のワナ?
ここから先のことは、あくまでも私個人の推測、推断になります。
このintroduceの問題からちょっと離れますが、たとえば英文中、3つの人称を表す単語が現れたとしましょう。
つまり「私、自分(たち)」を示す一人称。
会話などの相手、つまり「あなた(たち)」を示す二人称。
そしてそれ以外の第三者、つまり三人称。
これら3つがともに1つの主語とか目的語などの名詞句をこしらえているとします。
その際、この3つをどう並べるか?
どれが先でどれが後に続くのか?
これも高校初級(?)レベルでよく見られる文法ですが、実は
1⃣二人称、2⃣三人称、そして3⃣一人称の順に並べられます。
なぜこういう並べ方になるかと言えば、1つには目の前にいて話の相手、問いかけの対象たる「あなた(たち)」つまりyouを最も尊重すべき、というような思考があるため、と思われます。
「話をしている、その相手を一番優先して、立てるのが『礼儀』『会話のマナー』」というわけですね。
そしてその次に来るのが、youより一段下に置いておくべき第三者。
その場に居合わせるか、あるいは居合わせなくても、直接の話の相手でなければ、youよりも下に置く。
それがやっぱり会話のマナーと考えれば良いはずです。
一方、言い出しっぺの自分自身は一番末席に控えていること。
youとかhe、sheあるいはtheyよりも自分を一段下段において、一番控えめな位置におくこと。
その結果、「二人称⇒三人称⇒一人称」というフォームができあがります。
そして、こういった位置づけを考えていけば、一番礼儀正しくて傲慢さも感じられない、マナーが出来ている表現ということになります。
正しい会話のマナーで“人間関係”を考えれば納得?
でも、こういう文中の“登場人物”の相互関係、重さというものをとらえた場合、
「こういう思考がどうやらネイティブの使うintroduce A to B にも用いられているんじゃないの?」
と思われるのではないでしょうか?
つまり
S(主語=自分=一人称) introduce O(目的語=相手方=二人称) to 第三者(三人称)
と考えたとき、
I introduce you to him(her/them)
という英文でしゃべるのが普通になります。
この場合、『(私は)(あなたに)彼(女/ら)を紹介する』という役を当てはめる。
すると日本語的に、そして文法的にはあくまでyou(あなた)がintroduceの目的語のはずで、本来は「あなたを」なのですが、上の様な人称の順番を形成するフォームで言うならば結局のところyouが最優先。
それをあたかも第三者扱いして、「あなたを」というのは非礼かも知れません。
そこでyouたる「あなた」、二人称を最大限に尊重する形として、逆にtoの後の三人称たる『第三者』をとらえて『~を』とし、ニュアンス的にyouよりも“沈める”ワケですね。
you[二人称]はマナー的にhim/her/them[三人称]よりも尊重されなくてはならない。
だからyouの方を主体と見なし、youを中心とした表現を目指していく。
それがネイティブ流のintroduce構文だろうと思います。
ただ、あらためて言うまでもないことですが、少なくとも高校でこのintroduceの語法、そして和訳を学んだ人たちは今のところ、絶対と言って良いほど
S introduce O to ~ を「SはOを~に紹介する」と習って、そして記憶しているはずです。
今後はますます英会話の表現が学校の課程に取り込まれることになるのかもしれませんが、いまのところはこうしたネイティブそのままの「“真っ逆さま和訳”の方が正しい!」などと聞かされると、パニクること必定かも知れません。