洋紀Hiromichiの部屋

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創作音楽用語3⃣「リレーの2度」は使いようで美しい音楽表現に!

【創作音楽用語】の記事もこれで三つ目になりました。
今回取り上げてみる「リレーの2度」というのは、このブログの前身に当たる自己サイト「hiromichiの部屋」(現在運営終了)でも取り上げてみているものです。

もっとも、「リレー」という単語を聞くと、なんとなく運動会のリレー競争などを思い浮かべる方も多いんじゃないでしょうか?

リレー競争
運動会じゃこれでよく出場してましたW

でも、それがミソです。笑

「2度」というのは、もちろん二つの音の音程を指していて、それが2度だということ。
これにはオウターブを足した音程、つまり「複音程」の9度なども含まれる、と考えていきます。

ただ、とにもかくにも9度よりは2度の方が圧倒的に響きはきついものになりますから、優先的に2度の話を取り上げてみているワケになります。

ということで、どういう内容になるか、早速ですが見ていきましょう。

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リレーの2度とは?許されるのかダメなのか

まず、このリレーの2度の意味になりますが、旧自己サイト「hiromichiの部屋」でも説明していたとおり、次のように語って良いと思います。

任意の二つの声部間において、
下声(特にバス)が同一方向に継続して順次進行する、いわゆる音階順次進行(スケール進行)を呈しているところに、上声が跳躍して直行2度を形成するものになります。

このとき、上の譜面でおわかりのように、その直行2度と、その直前の時点における音程を見ると、二つの声部間をまたぐ形で、同一の音が存在します。
つまり、一声部からもう一つの声部へと、同じ音が受け継がれる(リレーされる)のです。

普通は2度の音程を単独で鳴らすのはなかなかリスキーなのですが、こういうリレーの2度になると、不快な感じが幾分弱くなり、そのため実作(特にバッハの作品など)ではよく目にします。

何で許されるの?2度の不快感が薄らぐ理由とは

じゃあなぜ、こういうリレーの2度という現象が、他の2度音程よりも好ましく聞こえたり、また実作の中までも利用されてしまうのでしょうか?

この理由というか原因については、少なくとも私の知る限り音楽関連の文献では目にしたことがありません。
だから結局のところ、私自身の独断偏見も合わさった理屈づけになりますが、あえてその理由を語ってみると次のようになるでしょう。

結局のところ、このリレーの2度というのは、二つの声部間で同じ音を受け渡ししていることとなりますが、そうすると擬似的ながら、二つの声部間で同じ音を「保留」している、つまり継続して固定された一個の音を鳴らしていることになります。

要するに、一個の音が継続して鳴っているものとして聞こえてくるのです。 
このような効果は、たとえ四声合唱の場合であっても二つの「同じ音」がほとんど同一に聞こえてきます。
ピアノなどのキーボードだったら全くの同一音となりますから、さらにいっそうそのように聞こえてくるのも無理はないでしょう。

そうすると、確かに2度がビリッと響くことは他の2度音程と同じになりますが、その一方で固定・保留されていると見なされる一個の音を響きの中に伴っているため、その分きつい感じは受けなくなるのです。

三声、四声ならいっそう実用化の可能性も

そして、二声でこうして2度のきつさが緩和されるとすれば、三声や四声だったらいっそう軟らかい表現になります。

大体の一般論としてですが、こういう不協和音程から生じる響きのきつさ・生硬さというのは、それを発生している声部間に加えて他の声部が増やされて同時に発音されていたり、発音時間(音価)がより短くなるなどすれば、いっそう目立たなくなるものです。

※念のため上の譜例では和声学や対位法のテキスト中では禁じられている表現もありますのでご注意ください。ただ実作レベルでは「こういう表現もアリになるだろう」という意味で表示しています。

実際、池内教本「二声対位法」では、定旋律と対旋律の二本しか声部がないためにこうした理屈は取り上げることができませんでしたが、続刊「三声ー八声対位法」では、早くも三声から条件付きで許している、という経緯があります。

池内教本は、対位法テキストの中でも最も厳格な規則が与えられている、と私も思いますし、ほぼ一般論として間違いないところだと思うのですが、そういう性質を持っている池内教本で、条件付きながらも許されている様子を見れば、このリレーの2度というのはやっぱり無視できないのではないでしょうか?

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そしてあと、四声の例も出しておきましょう。

なお、せっかくなので、四声の譜面は和音記号をつけてみました。
その内容は冒頭で内部変換、後半では反復進行を施してみています。
いずれも音友和声「和声Ⅲ 理論と実習」で現れるテーマです。
(※ただし、上行するリレーの2度については、下の譜例でもおわかりと思いますが、下行の場合とは異なり、一方の声部が必ずしもスケール進行(つまりこの場合、上方へと音階順次進行を継続すること)するわけではありませんので、これだけは注意してください)

和音連結(内部変換(「和声Ⅲ 理論と実習」)を含む)の実例です。                
こちらは上の三声の譜例と違って、すべてテキスト上で許されています(上記テキストp.406など参照)。

上の四声の譜例では、和声学テキストで許されているものばかりを出してみましたが、あくまでもテキストの許容範囲を超えるものもある、ということは押さえておくようにした方が良いでしょう。

そして、大体はこうしたリレーの2度を実作なり、あるいは(許された条件下で)和声学や対位法の実習上で使うにしても、次のように一般的な言い方ができると考えられます。

リレーの2度を形成する場合、そのスケール進行は圧倒的に下方進行が多く、また上声はほとんど常に内声になる。
二声でも可能だが、普通は三声以上の声部を必須。

リレーの2度はテキストでも許されている?

繰り返しますが、テキストでは和声学や対位法でも条件付きで許している場合があったりします。

ただ、それでも特に和声学の場合、こういう処方を嫌うケースがないわけではありません。
その理由の一つは、上でもちょっと触れましたが、音友和声の場合、このリレーの2度を正式に取り上げて、それを良いか悪いかを議論しているのが本章の外、つまり補足事項としてのみだからです。

テキストの補足事項をどう捕らえていくか?
人によっては本章で説明している諸事項と同列にして、その使用の可否を細かく取り上げていく人もいるかも知れませんが、逆に

「補足事項はあくまでも『補足』。したがって、本章と同じレベルで語っていくよりも、ひとまず補足事項を後回しにしたり、または補足事項で許されている内容を禁じてしまい、それによって基本的に、そしてより厳密な書法を学習者に目指そうとさせるべき」

などという考え方を持つ講師もいるかも知れません。
ほぼ同じ意味合いで、対位法の学習過程も同様ではないかと思います。

このあたり、師事する講師や先生によってバラツキが出てきたりするかも知れませんし、そしてまた学習者にとっても好きになれるかそうでないか、という分かれ目ができるかも知れませんね。

終わりにーバッハも多用している!リレーの2度はマスターして損ない書法

そういうわけで、リレーの2度という創作音楽用語について語ってみました。

2度というのは、とりわけ短2度など、二つの音を同時に響かせる場合、一番きつく響く音程になります。
けれども、こういうリレーの2度などは、その中でも非常に巧妙にきつい響きを緩和させることができますし、上の譜例なども実際にキーボードで音出しするとおわかりになりますが、意外なくらいに美しい、音楽的な表現となる場合があるのです。

そのためか、バッハも実作の中でよくこうしたリレーの2度を使っているケースがありますし、とりわけ四声コラールなど、ある意味そういう使い方の「宝庫」になっているとさえ言えると思います。

バッハ
この人はつくづくすごい・・・

コラールだけではなく、有名どころではあの「ロ短調ミサ」の終曲「我に平安を与えたまえ」の合唱の中でも、ナンと短2度の音程でバス、テノールの間でリレーの2度が見られます。

興味のある方は譜面で見つけてみてください。

というわけで、和声学テキストなどでは直接的には論じられていないが、使いようによっては見事な美しさ、音楽表現が生まれる可能性を秘めた、リレーの2度のおハナシでした。

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